2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

聞くひとは優しいのか

言葉を共感というシステムの部品みたいに用いると、それは決まって「おきまりのフレーズ」的な外観を呈することになり、その支配下で我々は、盲目な信者のように、笑い、手を握り、頷くことになります。 「ラストシーンがもとにあって、そこを目指して作品を…

うおおおおおおおおおと繊細

写真、上手くなりたい。何を撮っても構図がありきたりだーとか、光の入れ方がーとかモヤモヤしてしまうんだけれども、そもそも僕は良い写真がどんなものかという基準を、自分の中に持ってないことに気づいた。本はこんだけ読むのに、写真だって、良い作品を…

言葉がわれらを選ぶとき

絶対にそれでなければならなかった言葉だけで書かれた文章、そんなものを、探しているのかもしれない。どんなに美しく飾られた表現より、本をたくさん読んだ人だけが知っているような単語より、その人が普段何気なく使っている言葉が、その文章の中で唯一無…

東京とぼんやり

東京という街を縫い取って使い古した気になっているけれど、結局は借り物なんだろうな、いつまでも、自分のものにはなっていかない。むしろ、長く住めば長く住むほど、色々な人が人生の熱い時間を残していくから、知らぬ人の生の痕跡が景色を、日々を、上書…

見せてるつもりで見られてる

撮るばかりで撮られることがないのだけれど、ほんとうに上手く撮られることのできる人は撮られることを求めていない素振りが上手(ややこしいね、わざとです)なのではないかと、海辺の街で撮った写真を整理しながら思った。前にふらっと立ち寄った写真展は…

ぐらつく真夏の F o V

人の目にはどれほどのものがちゃんと見えているんだろうか。僕自身は目が小さく逆睫毛が刺さってほとんど麻痺状態、でも光やものの輪郭だけは認識できるという状態によくなって、ほんとうにそれは見えていると言えるのか、視覚に実感が持てない。まるで「街…

まだ物語を信じていられる

西加奈子『サラバ!』を読み終わった。夜通しずっと読んで、(一度寝て)昼頃に起きてラストを迎えた後、しばらく鼻の奥がツーンとした状態、なにもいうことができなかった。「おっきいなあ」という、壮大ななにかを前にした時の、ただなにも考えず叫びたく…

白々しい朝の光について

西加奈子『サラバ!』、ほんとうに面白いです。小学生くらいにハマった重松清を思い出す。思えば中学から村上春樹、村上龍、ドスト、みたいなメタフォリカルで酩酊したような世界に傾倒していたから、今回のような「思いっきり人間くさい」小説を読むのは久…

おにぎり的われら

「暑くて食欲が出ない」と言う人は身体に季節が染み込んでいるみたいで羨ましい、どんなに暑さに閉口していても時がくれば腹の減る自分は、なんて季節感のない身体なんだろう、という話を書きたいのだけど、なかなか上手く流れていかない。何回も書き出しを…

好きはごちゃごちゃ

好きなものに関する問いかけに対して、ある種の模範解答みたいなものを瞬時に組み立ててしまうことがあります。例えば「なぜ小林秀雄が好きなのか?」と聞かれた時、「①自分が都会育ちで、特にこれと言った才能もなかったために、②天才の観ている世界や思考…

書きながら同時に読んでいるという現象について

文章を書く時、最初から全体が見えている時などまるでなく、かといってすべての言葉がランダムに瞬発的に発せられて最後に辻褄があう、というのも少し違う。今ここ、を見つめながら、それでも数分後に描かれる景色に向かって進んでいるんだという気分、眩し…

創作とオリジン

フリーライターとしてインタビュー記事を書くようになって一ヶ月くらい、それでももう5本は書いているよな、10本は言い過ぎかな、とにかく全てのお話が面白くて、それが完成された記事になっていく過程が楽しくて、大丈夫だろうか、と不安になる。小説を書い…

never ending 平成

平成最後の夏です。あえてそう口に出したとき、お前はそんなに平成を愛していたのかよ、最後を惜しむほど大切に接してきたのかよ、そんな思いが首をもたげて心のどこかでウッとなる。そもそもいつからこんなにも自分の言葉に厳しくなったのか。意識が高いの…

愛す可き、

ひとが、可愛くなっている。 作為と作品が似ているのは一種の詐欺で、本来作品とは作るところにはない。世界というものが目の前と、それからどっか脳髄の裏側かなんかにあって、そこから何か、色や音、概念や言葉を降霊術みたいに降ろしてくることが作品を成…